五月のお念仏の会

あるタクシーの運転手さんの話です.ドアを閉めても、いつまでも行き先を言わない男性がいました.『お客さん、行き先を言ってくれないと走りようがないんですが』するとボソッと一言、『海が見られたらどこでもいいんです』私、この人死ぬ気だなとピンときました.そこで、私のよく知っている湘南海岸をめざしました.運転しながら話しかけたんです.『お客さん、私、会社をつぶしましてね、何もかも無くなっちゃって、死のうとしたんです.でも家族の事を考えたら無責任のような気がしてね。死ぬのはいつでも死ねる、もう少し生きてみようと思い直してタクシードライバーになりました.ところがこれが面白くなって、今では過去の事などみんな忘れてしまいました.私は他人様が喜んで下さるような種まきをいっぱいしておこうと思います.会社に帰ったらまずドライバーたちが使う風呂と便所を掃除します.入社した頃は汚れていてね、汚れているから、ますます汚くなるという事が分かりました.今は誰も汚しません。種まきの楽しさが分かってきました。こんな事を一方的に話していたら、お客さんが泣き出してしまいました。』『ありがとうございました。私死にません.家に帰ります.Uターンして下さい.』彼とは今飲み友達だそうです.種まきをいっぱいして、きれいな花を沢山咲かせたいものです.