二月のお念仏の会   第334回

村祭り
ある山村では秋の収穫が終わると、毎年収穫を祝ってお祭りが開催されます。その祭りの冒頭に行われるのが酒樽の鏡開きです。ところが、ある年は大変な不作に見舞われ、村には酒樽を買うお金がありませんでした。そこで村長さんは考えました。”空の酒樽はあるのだから、村中の家から、一軒につきコップ一杯のお酒を寄付してもらい、そのお酒を樽に入れればなんとかなるのではないか”と。案の定、空の酒樽はいっぱいになりました。樽に蓋をし、鏡開きの準備ができました。例年のごとく村長さん達によって鏡が開かれ、祭りが始まりました。ところが、酒を飲んだ村人達が怪訝そうな顔をしているのです。村長さんはどうしたのだろうと、お酒を飲んでみたら、それは水だったという話です。
それは、”自分一人くらい酒の替わりに水を入れてもわからないだろう”と村人全員が考え、実行したからです。この話は笑い話のようにも聞こえますが、人間本来が持っている甘えや自分に都合よく考えてしまう性格というものをよく表していると思います。”ちょっとだけだからとか誰も見ていないから”という考え方を捨て、自分は、良くない事、間違った事は絶対にしないんだという強い信念を持って生活する事が大切だと思います。