十一月のお念仏の会   第331回

今日の話は、あるアメリカ人の書いた詩が元になっている話を私なりに色々と置き換えて作ったものです。
ある人が、これまでの自分の一生を振り返る夢を見ました。
砂浜に、二組の足跡が並んで続いていました。この人は、仕事も私生活も順調で、お墓まいりもよくし、菩提寺の行事にも必ず参加する熱心な信者さんでした。常に仏様と生活を共にしている厚い信仰を持った人でした。だからこの二組の足跡が自分と仏様のものだとすぐにわかりました。しかし、ある時から仕事がうまくいかなくなり、さらに家庭内もギクシャクし始めました。そしてあれだけ信仰熱心だったのに、お寺にも全く行かなくなってしまいました。ちょうどこの頃です。二組あった足跡が一組になってしまったのは。
この話を初めて聞いた時、私は、この一組になってしまった足跡は、絶望に打ちひしがれて一人ぼっちで歩くその人自身の足跡だと思いました。ところがそうではなかったのです。話は次のように続いています。
 阿弥陀様は『日頃から南無阿弥陀仏と私の御名を唱えている信仰心の厚いお前のそばを離れたことはない。お前が最も苦しんでいた時、砂の上に一組の足跡しかなかったのは、私がお前を背負って歩いていたからなのだよ』とおっしゃいました。その人はハッと気付きました。あの一組になった足跡は自分のものではなく、阿弥陀様の足跡だったことに。